細胞内大規模分解システムであるオートファジーは、細胞成分のリサイクルや飢餓時の栄養源確保に加え、炎症反応、心不全、糖尿病、アルツハイマー病の防止や寿命延長、病原菌の排除、免疫システムの維持など多岐に亘る役割を持つことが最近明らかになってきている。 今回我々は網羅的結合タンパク質探索により、オートファジーに必須のタンパク質Beclin1と結合する未報告の新規タンパク質を二つ発見し、Atg14L, Rubicon と名付けた。 これらは Beclin 1と相互排除的に結合し、Atg14L-Beclin1複合体はオートファジーの初期過程を正に制御し、一方 Rubicon-Beclin 1 複合体は後期過程を負に制御することが判明した。さらに、 Rubicon 複合体はエンドサイトーシス経路に対しても抑制的に働いていた 。 この発見は、オートファジーの制御機構の理解に大きく寄与するものである。また、 Beclin 1 の機能が低下したヘテロ KO マウスではがんが多発することが知られている。オートファジーとエンドサイトーシスという2つの重要な細胞機能を、 Beclin1 を介して Atg14L と Rubicon が巧妙に調節し、発がんを抑制しているのではないかと考えられる。