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メンブレントラフィック
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  計画研究  
 

大野 博司
<(独)理化学研究所・免疫・アレルギー科学総合研究センター>
http://leib.rcai.riken.jp/riken/index.html

研究課題名:輸送小胞形成・積み荷蛋白質選別の分子機構とその高次機能における役割

概要:細胞内で合成された蛋白質が、その局在するべき細胞内小器官に正しく選別輸送されることは、細胞が生存し正常に機能するために必須なばかりでなく、神経系や免疫系をはじめとする高等多細胞生物における高次機能の制御、さらには細胞・組織・個体の正常な発生・分化・生存・再生などにも重要である。トランスゴルジ網、エンドソーム、リソソーム、そして細胞膜などのオルガネラ間を結ぶ蛋白質輸送は、AP (adaptor protein)複合体ファミリーとクラスリンから形成される輸送小胞によって行われる。それぞれのAP複合体ファミリーは、輸送される蛋白質に存在する特定のアミノ酸配列からなる輸送シグナルを識別し、異なる輸送小胞に積み込むことにより、選別輸送を可能にしている。本研究では、AP複合体ファミリーの機能を分子レベルで解明するとともに、神経細胞および上皮細胞という高等多細胞生物に特徴的であり、かつ生体高次機能を担う細胞群に限局して発現しているAP複合体を中心に、遺伝子改変マウスを用いて個体レベルでの役割を解析する。

大野 博司

泉 哲朗 泉 哲郎
<群馬大学・生体調節研究所>
http://imcr.sb.gunma-u.ac.jp/lab/geneeng/index.html

研究課題名:メンブレントラフィックによる調節性分泌の制御機構

概要:刺激の存在時のみ開口放出を引き起こす調節性分泌経路は、細胞間信号伝達の手段として、多細胞高等動物の根幹を成す高次機能である。この経路には、神経シナプス小胞、分泌顆粒、メラノソームなど、必要時に開口放出を引き起こすための分泌物質貯蔵器官が発達している。これら分泌小胞の開口放出過程は、分泌刺激シグナルの認知、細胞内移動によるターゲット膜への結合、最終的な膜融合という複合的な過程から成り立っており、小胞膜に局在する蛋白質により制御されていると考えられる。近年、神経シナプス小胞膜の生化学的解析が進み、その構成蛋白質と機能が明らかにされてきたが、分泌顆粒やメラノソームなどの顆粒様オルガネラ膜に局在する蛋白質の生化学的解析は、大きく遅れている。その一因として、これらオルガネラが、多細胞生物で高度に分化した量的にマイナーな細胞に発達し、生化学的解析が困難なことがあげられる。顆粒様オルガネラは、その形態像のみならず、バイオジェネーシス、開口放出のキネティクス、Caイオン感受性などがシナプス小胞と異なり、これを裏打ちする膜構成蛋白質の違いが存在するはずである。最近、申請者らは、低分子GTP結合蛋白質Rab27a/Rab27b、およびGranuphilinをはじめとするRab27エフェクター蛋白質が、顆粒様オルガネラの開口放出過程に重要な働きをすることを見出した。本研究は、血糖調節という生体内できわめて重要な働きをする膵β細胞を主たる題材にして、これら分子の機能解析を行い、顆粒様オルガネラの開口放出に関する分子機構の理解を進展させる。同時に、インスリン分泌不全を示す糖尿病をはじめとして、細胞・組織特異的な小胞膜の輸送障害を示す疾患の成因や病態生理解明に寄与する。


佐々木 卓也
<徳島大学・大学院医学研究科>

研究課題名:多細胞生物の可塑性を支える小胞輸送の制御機構

概要:多細胞生物はそのホメオスタシスを維持するために、神経-内分泌系や免疫系を始めとする高次機能システムを構築し、それを制御する情報の可塑性を確立している。情報の可塑性を確立するためには、情報を担う分子群が正しい時に正しい場所で機能することが必須であるが、これらの分子群のダイナミックな移動は、個々の細胞内における小胞輸送によって支えられている。実際、シナプス小胞や分泌顆粒、抗原提示細胞内のMHCクラスI およびII分子を含む小胞の輸送は、神経-内分泌系や免疫系の調節に重要な役割を果たしている。Rabファミリー低分子量GTPase(Rab)は、哺乳動物細胞では60以上のメンバーが見い出されており、これまでの研究から、それぞれのメンバーは特定の細胞内小器官に局在して小胞輸送の選択性を規定していることが明らかになりつつある。したがって、高次機能の発現・維持に必須である機能分子群の正確な輸送にこのRabが重要な役割を果たしている可能性が高い。実際、研究代表者は、これまでRabのメンバーのひとつであるRab3Aの機能と作用機構についての解析を行い、Rab3Aがシナプス小胞輸送の制御を介して神経伝達物質の放出を調節することを明らかにしてきている。その過程で、Rab3Aの関連蛋白質群を同定し、それらの作用機構を解析することにより、Rab3A系が神経伝達物質の放出を調節するだけでなく、記憶や学習などの高次神経機能にまで関与する調節系の中心となる分子であることも明らかにしつつある。一方、多細胞生物の発生・分化といったホメオスタシスの確立過程では、形態の可塑性を獲得する必要があり、ここでも小胞輸送は極めて重要な役割を果たしている。組織・器官形成においては、まず細胞が正しい時に正しい場所へ移動して、細胞シートを形成することが必須である。これらは、細胞-基質間および細胞-細胞間接着分子のダイナミックな移動に基づく細胞運動・接着によって支えられている。研究代表者は、最近、この接着分子の移動がRabによる小胞輸送により制御されていることを明らかにしつつある。そこで、本研究では、多細胞生物のホメオスタシスの維持や確立に必須の情報や形態の可塑性を支える小胞輸送の制御機構をRabに注目して明らかにしていくことを目的とする。特に、情報の可塑性としては神経伝達を、形態の可塑性としては、細胞の運動と接着に焦点を絞って解析していく。

佐々木 卓也

竹居 孝二

竹居 孝二
<岡山大学・大学院医歯学総合研究科>
http://www.okayama-u.ac.jp/user/med/biochem/index.html

研究課題名:エンドサイトーシスの分子機構:分子構造から細胞機能まで

概要:エンドサイトーシスはほとんどの真核細胞が有するプロセスで、細胞表面受容体の取込みによるダウンレギュレーション、細胞外からの栄養摂取、あるいは神経シナプスにおけるシナプス小胞の再生など、さまざまな細胞機能に関与している。
エンドサイトーシスは、細胞膜が陥入し、小胞として細胞内にとりこまれる一連の過程であり、これに関与する分子が近年数多く同定されてきている。これらの分子の多くは複数の結合モチーフをもち、その相互作用はエンドサイトーシスの過程でダイナミックに変化しているものと考えられる。
本研究では、エンドサイトーシスの分子機構を解明するために、エンドサイトーシス小胞形成過程における機能分子(Clathrin、Dynamin、Amphiphysinなどのタンパクや、イノシトール4,5-二リン酸などの膜脂質)の動態をリアルタイムで可視化する。機能解析により予測される分子機構を、三次元構造解析の面からも検討する。さらに、機能分子のリン酸化等によるエンドサイトーシスの調節機構も明らかにしていく。


中野 明彦
<東京大学・大学院理学系研究科>
http://www.riken.go.jp/r-world/research/lab/wako/membrane/

研究課題名:植物の機能発現とメンブレントラフィック-酵母研究からの展開

概要:メンブレントラフィックは,高等植物の高次機能において重要な役割を果たしている。植物における細胞極性という概念が,ごく最近の植物ホルモン・オーキシンの極性輸送の研究などを通じて一気に脚光を浴びつつあるし,また基本的に動くことのできない植物が発生プログラムや環境変化に応じて個体の形を変えていくために必須な,細胞の分裂と伸長の方向の決定も,全面的にメンブレントラフィックに依存している。さらに,植物細胞を特徴づける大きなオルガネラとしての液胞には,分解・貯蔵の機能に加え,細胞体積の大部分を支え空間を確保するという使命があるが,環境の緊急な変化などに応答する際の液胞の役割は大きく,そこでメンブレントラフィックが果たしている意義を知ることはきわめて重要である。本研究では,分子機構の理解という意味でこの分野をリードする酵母の知見を植物に応用し,これまで遅れを取ってきた植物のメンブレントラフィックの研究を大きく発展させることを目的とする。細胞レベルの分子機構の解明から,多細胞システムとしての高等植物の高次機能の理解へと,膜のダイナミクスという観点から研究を進め、動物や酵母にはない植物独自のメンブレントラフィックの機構に注目し,植物の形作りと環境応答,生存戦略における細胞内膜系の意義を明らかにする。

中野 明彦

中山 和久 中山 和久
<京都大学・大学院薬学研究科>
http://www.pharm.kyoto-u.ac.jp/physchem/

研究課題名:ゴルジ体を中心とするメンブレントラフィックの制御機構

概要:小胞体で合成された分泌蛋白質や膜蛋白質は,ゴルジ体を経てトランスゴルジネットワーク (TGN)で選別され,最終目的地(細胞膜,エンドソーム,リソソーム等)へ輸送される。オルガネラ間の蛋白質輸送を仲介する輸送小胞は,低分子量GTPaseのARFの制御下で積み荷蛋白質が集積することにより形成される。この際に,積み荷膜蛋白質の細胞質領域に存在する輸送シグナルがコート蛋白質により認識される。形成された輸送小胞は標的オルガネラ膜と融合し,積み荷蛋白質を受け渡す。TGNとエンドソーム/リソソーム間の輸送はクラスリンコート小胞が仲介する。さらに,積み荷蛋白質とクラスリンの結合を仲介する4種類のアダプター蛋白質 (AP)複合体 (AP-1〜AP-4)が存在し,別個の輸送経路に関与する。しかしTGNとエンドソーム/リソソームや細胞膜の間の輸送は複雑で,これら以外にもAP蛋白質が存在する可能性があった。最近申請者らは,新規のAP様蛋白質ファミリーGGA (GGA1-GGA3)を同定した。GGAはさまざまな蛋白質と相互作用することにより,マンノース6リン酸受容体(M6PR)等の積み荷蛋白質のTGNからエンドソームへの輸送を調節すると考えられる。本研究では,種々のドミナント・ネガティブ変異体を用いた機能解析,in vitroでの小胞の形成や融合のアッセイ系の確立,siRNA法を用いたノックダウン解析,遺伝子欠損マウスを用いた組織学的な解析などにより,AP複合体やGGAなどのコート蛋白質による細胞内小胞輸送(特にTGNとエンドソーム/リソソームの間の輸送)調節機構の全貌の解明,および病態との関連の解明を目的とする。


原田 彰宏
<群馬大学・生体調節研究所>
http://imcr.sb.gunma-u.ac.jp/lab/mcm/index.html

研究課題名:細胞極性の形成・維持におけるメンブレントラフィックの役割

概要:細胞の極性は細胞の機能や組織、器官の形成に重要である。極性を持つ細胞では多くの蛋白がゴルジ体やTGN (trans-Golgi network)等で頂端側(apical)、側底側(basolateral)に分配、輸送され、その過程が極性の形成、維持に重要と考えられている。
 本研究では、その分配、輸送に重要と考えられている低分子量GTP結合蛋白(rab8a,b)、SNARE蛋白(syntaxin3, VAMP7)MAL蛋白(MAL, MAL2)等の遺伝子をノックアウトし、作製したマウスの細胞極性の形成、維持と、組織や器官の形成を解析する。また、作製したマウスが胎生致死になる可能性が大きいため、Cre-loxPを用いた組織特異的ノックアウトを行う。
 また、極性輸送に関与する分子の新規同定も行っていく予定である。

原田 彰宏

山本 章嗣

山本 章嗣
<長浜バイオ大学・バイオサイエンス学部>

研究課題名:3次元免疫電顕法を用いた小胞輸送過程の高解像解析

概要:細胞内には、複雑な内膜系が発達し、高度に分化し多様な機能を持つ種々のオルガネラが形成されている。小胞輸送系は、これらのオルガネラを有機的に結び、それらが協調して、分泌、吸収などの複雑な細胞機能を構築することを可能にしている。現在、小胞輸送に関わる分子群が次々と同定され、小胞輸送の分子機構が急速に明らかになりつつある。小胞輸送のさらなる解明のためには、これらの分子群が小胞輸送系のどこに、どのように存在し、どのような振る舞いをするかについて知ることが不可欠である。しかし、小胞輸送に関わる膜系は、小胞状、管状および扁平嚢状の膜からなる複雑な構造であり、通常の超薄切片による電子顕微鏡観察をもってしても、この構造が全体としてどのような形態をとり、細胞骨格などの他の細胞内構造といかなる位置関係にあるのかを知ることは難しい。本研究では、免疫電顕法を行う際に、通常より厚い電子顕微鏡切片(200-300nm)を、通常より高い電圧(約120-200kv)で観察し、傾斜装置により写真撮影を行う、あるいは電顕トモグラフィー像を作製することにより、小胞輸送装置を高解像力で立体観察する。そして、この複雑な形態を持つ輸送装置(小胞体出芽部位、COPII小胞、COPI小胞、シスゴルジ網、ゴルジ小胞、ゴルジ層板、トランスゴルジ網、分泌小胞、分泌顆粒、エンドソーム、オートファゴソームなど)における小胞輸送蛋白質分子の正確な局在と挙動を明らかにし、小胞輸送装置の全体像を明らかにすることを目的としている。


吉森 保
<大阪大学微生物病研究所・環境応答部門・生物制御分野>
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/lab/cellreg

研究課題名:リソソームを中心とした輸送ネットワークの分子機構と機能

概要:分解オルガネラであるリソソームは、細胞内外の物質を消化する主要な場である。リソソームがその機能を発揮するためには分解の対象となる物をリソソームに運び込む仕組みが必要であり、そのためにメンブレン・トラフィックによる輸送ネットワークが細胞内に張り巡らされている。ネットワークは細胞外から取り込まれた分子が辿るエンドソーム系経路と、細胞自身の構成成分が運ばれるオートファジー経路からなる。これらのメンブレン・トラフィックは、来たものは全て分解してしまうリソソームにおいて「何を」「いつ」「どのくらい」分解するのかをコントロールしており、そのような制御を通して栄養物消化や代謝回転など基本的な細胞機能に加え、組織・個体の構築・維持に関わる発生、分化、情報伝達など様々な高次機能をも担う。従ってこれら輸送システムの異常は多細胞システムの破綻に繋がることが予想される。実際、いわいわゆるリソソーム病を始め、発癌、神経変性疾患、病原性微生物の細胞内侵入等多数の疾患に両輸送経路が関係していることが明らかになってきている。リソソーム加水分解酵素の詳細な研究に比べ、分解を事実上制御しリソソームに多彩な機能を発揮させているこれら輸送システムの実態には今だ謎が多い。エンドソーム系及びオートファジーは、比較的研究の進んでいるメンブレン・トラフィックである分泌経路とかなり様式を異にしており、独自の機構の存在が強く示唆される。本研究は、これらリソソームを巡る輸送ネットワークの1)膜ダイナミクスの分子メカニズムと2)細胞や組織・個体における機能的意義の解明を目指すものである。特に2については、感染症や異常たんぱく質蓄積症等の疾患との関連を追及する。

吉森 保

和田 洋

和田 洋
<大阪大学・産業科学研究所>
http://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/mcb/

研究課題名:発生・分化を担うエンドソーム・リソソームのメンブレンダイナミクス

概要:エンドソーム・リソソーム等のオルガネラは細胞膜の形成・維持・変換を通して発生分化のプログラムの実現に直接機能する。リソソームは従来、ターミナルのコンパートメントと考えられていたが、最近リソソームも新たな膜供給源となりうることを発見している。本研究では、遺伝学的アプローチの直接的適用が困難である高等動物のエンドソーム・リソソームの研究を、強力な遺伝学・分子生物学的解析が適用できる酵母の系を援用し効率的に推進することにより、エンドソーム・リソソームの特異性を規定する分子、そしてオルガネラ間の相互変換を担う装置の実態を明らかにすること、さらには、メンブレントラフィックによる細胞・組織構築の制御を分子レベルで解明し、個体レベルでの高次機能発現の素過程として位置付けることを目的とする。