ホーム > 領域の概要 > 領域を始めるにあたって | ||
本年度より、文部科学省科学研究費補助金特定領域研究「メンブレントラフィック-分子機構から高次機能への展開-」(領域番号:504、略称領域名:トラフィック)が発足いたしました(平成15年度〜平成19年度)。
本特定領域は、平成10-13年度の特定領域研究B「小胞輸送-細胞内メンブレントラフィックの分子機構-」(中野明彦代表)を基盤とし、その内容を質・量ともにさらに発展させようとするものです。「メンブレントラフィック」という言葉にあまり耳慣れないと感じる方もいらっしゃるでしょう。真核細胞の内部は種々のオルガネラ(細胞小器官)で満たされており、細胞が正常に機能するためには、細胞内で合成される数万種類にも及ぶ蛋白質のそれぞれがその所属すべきオルガネラに正しく輸送される必要があります。中でも、小胞体、ゴルジ体、エンドソーム、リソソーム、細胞膜などの間で行われる蛋白質輸送は、輸送小胞などの膜構造によって精妙かつダイナミックに制御されており、これをメンブレントラフィックと総称しています(詳しくは研究目的と意義をご覧ください)。本申請領域の目的は、酵母から高等多細胞生物に至るまで全ての真核生物において多様な機能を担うメンブレントラフィックの生理的・病理的意義を、分子・細胞・組織・個体のあらゆるレベルで明らかにすることにあります。また、メンブレントラフィックは多様な生命活動の基礎となる細胞機能であることから、他の研究分野とのオーバーラップも多く、学際的・横断的な研究領域としての側面も併せ持っています。この様な観点から、既に当該分野で相応の実績を挙げている研究者を計画研究代表者として迎え、強力に研究を推進していくと共に、公募研究を設けて新奇かつ大胆な発想を持つ若手研究者や学際的研究を展開する境界領域の研究者をも巻き込んだ弾力的な領域の運営を目指します。そうすることにより、特定領域研究の最大の特徴ともいえるグループの利点を生かした研究を展開し、結果として相乗的な研究の発展が達成できるでしょう。本領域研究によって得られる成果は、生命現象に対する理解を深めると同時に、メンブレントラフィックの破綻に起因する病態の理解から診断法や治療法の開発へと続く医学上の展開の基盤ともなるものです。 メンブレントラフィックは、蛋白質の局在、オルガネラ形成という細胞機能の根幹に関わる重要な問題であり、細胞生物学の中心的課題の一つとして、特にここ数年〜10年にかけて全世界で多くの研究者が精力的に取り組んできた結果、現在飛躍的な発展を遂げつつあります。一方我が国ではメンブレントラフィックの研究に従事する研究者の数は決して大きいものではありませんでしたが、前述の平成10-13年度の特定領域研究B「小胞輸送」を中心に、世界に比肩する研究が発信できるようになってきました。5年間という限られた研究期間をフルに活用して、日本のメンブレントラフィックの研究を、世界をリードするレベルにまで押し上げることが本領域に課せられた任務と考え、この目標に向けて班員一同、研究に邁進いたしますので、ご理解、ご支援、ご協力、そしてご批判をよろしくお願い申し上げます。
|
||
平成15年10月 領域代表: 大野 博司 (金沢大学がん研究所・教授) |
||